2025/05/10骨董品買取BLOG
【感動の一日】
出張遺品買取 感動的の瞬間 〜品物に宿る記憶と想い〜
骨董品や古美術品の出張買取を仕事にしていると、ときに思いがけないほど深い“人生の物語”に触れる瞬間があります。
先日、一本の電話が当店にかかってきました。
電話口の女性は静かな声でこうおっしゃいました。
「父が生前、大切にしていた骨董品があるんです。整理したいのですが、どうしても自分たちでは手を付けられなくて…。もしよければ、見に来ていただけませんか?」
その声の奥には、哀しみと決意、そして迷いが同居しているように感じました。
指定された日、私はご自宅に伺いました。
古い木造住宅の門をくぐると、小さな庭に手入れの行き届いた植木が並び、庭先には季節の花が咲いていました。長く大切に住まわれてきたことがすぐにわかる、どこか懐かしい佇まいのお宅でした。
玄関で出迎えてくださったのは、60代半ばくらいの女性。きちんとした身なりで、言葉も丁寧な方でした。私を見ると、少しほっとしたように微笑まれました。
「こちらです」と案内された部屋に入ると、和箪笥の上に丁寧に並べられた陶器や茶道具、硯や巻物のようなものがありました。いずれも状態が良く、手入れされていたのが伝わってきます。
「父は古いものが好きでね。若いころから少しずつ集めていたみたいです。何が高いとか、価値があるとか、私たちにはわからないんですけど…」
私は一つひとつ丁寧に拝見させていただきました。
江戸期の染付の皿、昭和初期の急須、南部鉄器の茶釜、そして明治時代の書簡。どれも非常に保存状態が良く、丁寧に扱われていたことが伺えました。
ある掛け軸に手を伸ばしたとき、ご婦人が言いました。
「その掛け軸…父がとても大事にしていて。正月には必ず床の間に飾っていました。『これはな、伊勢で手に入れたものなんだ』って毎年話していたんですよ。」
その言葉に、私は胸がじんと熱くなりました。
骨董品は、ただ古い物ではありません。
持ち主の時間、記憶、想いを封じ込めた“生きた証”なのです。
私は、買取額だけでなく、それぞれの品がどういった時代のものか、どういった背景があるかを丁寧にお伝えしました。ご婦人はうなずきながら、時折目を細め、懐かしむように品物を見つめていました。
査定が終わり、金額をご提示すると、ご婦人は静かに手を合わせてこう言いました。
「父が大切にしていたものを、ちゃんと見てくださってありがとうございます。お金のことも大事だけど、こうして誰かに受け継いでもらえるって、本当にありがたいことです。…これで、父もきっと喜んでくれると思います。」
その目には、涙が光っていました。
その瞬間、私も言葉に詰まりました。
買取とは、ただ「物」を扱う仕事ではありません。
それぞれの品に込められた「想い」を受け取り、必要とする新たな持ち主へと繋いでいくこと。それが私たち骨董品買取の仕事であり、使命なのだと、改めて強く感じた一日でした。
最後に
遺品整理は、誰にとっても心のエネルギーを必要とする大切な時間です。
「捨てるには惜しい」「価値がわからない」「誰かに大切にしてほしい」――そんなお気持ちを、私たちは真摯に受け止め、心を込めて対応いたします。
もし、ご家族の遺品や古い品々の整理にお悩みの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
物に宿る想いを、丁寧につなぐお手伝いをさせていただきます。