2025/04/17骨董品買取BLOG
【一期一会の旅路】— 心を揺さぶる一日と、美しい夕日
【一期一会の旅路】— 心を揺さぶる一日と、美しい夕日
今日は、不思議なくらい心に残る一日になりました。
朝から4件の買取依頼があり、慌ただしいスケジュールではありましたが、その中でたくさんの「人」と「物」との、深いご縁に出会うことができました。
最初に訪れたのは、ご年配のご夫婦のお宅。
玄関先で出迎えてくださった奥様の柔らかな笑顔に、ほっと心が和みました。お話を伺うと、今回手放される品々は、ご主人が若い頃から少しずつ集めてこられたものとのこと。中には昭和初期の陶器や、古民家から受け継いだ欄間などもあり、その一つひとつに、ご夫婦の時間と歴史が詰まっていました。
「長い間、家にいてくれた子たちだから、大切にしてくれる人の元へ渡ってくれたら嬉しいわ」
奥様がそうおっしゃったとき、私は強く心に刻みました。骨董とは、ただの“物”ではなく、人生の記憶であり、想いそのものなのだと。
次に伺ったのは、若いご夫婦のお宅。お祖父様が遺された掛け軸や硯箱をお持ちでした。「価値があるのかわからないけれど、ちゃんとした人に見てもらいたくて」と私たちを選んでくださったことが、何より嬉しかったです。お祖父様と過ごした日々を懐かしそうに語るその姿に、思わず胸が熱くなりました。
午後に訪れたお宅では、かつて茶道をされていた方から茶道具一式を譲り受けました。使い込まれた棗や茶碗には、使い手の心が宿っているように思え、手に取るたびに静かな感動がありました。長年愛用されていた品には、言葉にできない「気配」があります。それを感じ取ることができるこの仕事に、改めて誇りを持ちました。
最後に訪れたのは、お一人暮らしのご婦人。
「もう自分の代で終わらせてしまうのはもったいないから」と、古い箪笥の中から大切に包まれた漆器や陶器を、ひとつずつ見せてくださいました。
その手つきは、まるで長年連れ添った友人に別れを告げるかのようで、とても丁寧で愛おしげでした。
一日の終わり、すべての買取を終えて車を走らせていると、西の空がゆっくりと茜色に染まっていくのが見えました。
遠くの山並みに太陽が沈んでいく光景をしばらく眺めながら、今日という日を思い返しました。
人と人との出会い。
物と人の別れ、そして新しい物語の始まり。
それを静かに見守ってくれているかのような、美しい夕日でした。
骨董の世界は、決して派手ではないけれど、その静かな佇まいの中に、何百年もの時と、たくさんの想いが詰まっています。
そしてそれを託してくださるお客様の気持ちに寄り添い、真摯に受け止めることが、私たちの仕事であり使命だと、改めて感じた一日でした。
明日からもまた、一件一件のご縁に心を込めて向き合ってまいります。
今日お会いしたすべての皆様、そしてその品々に、心からの感謝を込めて。